石田誠 器展

2015年3月21日(土)−29日(日)
会期中無休
作家在店日:21日(土)・22日(日)

薪窯の南蛮焼締は讃岐土。
紅毛手や白磁には砥部の磁器土を。
この陶土と磁土を合わせて作られた
スリップウェアが今回の新作です。
焼き締まる形にやわらかな色。
春の息吹をここにも感じます…
心はずませてくれる焼物が、
今年も愛媛より届きます。

左:南蛮焼締の碗と徳利。白磁染付碗。スリップウェア・無地の
  徳利。紅毛手の染付碗と染付丸壺に、紅毛手・ブルーの丼。
中:土を変えた新作のスリップウェア6.5寸皿(無地も含む3点)。
右:白磁の丸壺(小)。

愛媛県松山市に石田さんを訪ねるのは
11度目となりました。市街地から乗るバス
は毎年同じ道を走るのに、目に留まる景色
はいつも違い、新たな発見を楽しむ50分
の道のりとなっています。でもバスを降り、
石田さんの工房へ続く山間の道には、
途中きまって足を止める場所があります。
迫力ある幹と枝ぶりの桃があるのです。
花を咲かせた姿もいつか見てみたい。

石田誠 いしだまこと

1965年 愛媛県に生まれる
1988年 愛知県瀬戸市に転居
1989年 愛知県立窯業高等技術専門 
      専攻科卒
1996年 愛媛県松山市窪野町に築窯

工房へお邪魔すると、石田さんはカンナを花器の底に当て、高台を
削り出す作業中でした。そして、素焼の窯詰めを待つ状態の器が
さげ板の上にずらり並んでいるのも目に飛び込んできます。様々な
サイズと形の鉢。今までに無い大きさ(口径26〜30cm)のリムボール
も綺麗に作られていました。出来上がりは是非展覧会でご覧下さい。

次に石田さんは、磁器土を切株の上で形を整え、それを轆轤に
セットし、塊から連続でひいていく[山びき]を始めました。そして
出来上がったのは、焼き上がりが6寸になると言う使いやすそうな
鉢です。この後、この粘土の塊からは6個の鉢が作られていきます。

[作業の色々]

石田さんが轆轤を回す横では、去年の夏から石田さんのお手伝い
をされている田坂香代子さん(松山で焼物をされています)が、違う
仕事を進めていました。ルーターを使い高台に付着しているものを
削り、その後高台全体を[はま磨り機](はまとは高台の事だそう)と
言う機械で研磨。(これでテーブルも傷つけません) 伊達メガネと
防塵マスク着用の作業。そして洗い(冷たい山水)、商品は完成に。

左:こちら釉薬調合のマシーン。白い磁製の容器(ポットミル)に釉薬の原料
  を入れ、下のローラーの回転で容器も回り、原料を細かくするという物。
中:調合された釉薬をふるいで濾して桶にうつします。(ふるいの目の大きさ
  で釉薬の生目が変わり、その違いが器の表情にも表れるようです)
右:そして容器からはこんな玉(磁製?)が出てきました。これが中で回り、
  原料の粒子を細かくしているよう。なので凄い音をたてて作動しています。

二人の仕事は淡々と、無駄な動作なく且つ丁寧に行われていました。
石田さんは6寸鉢の後、轆轤に僅かに残った粘土で小壺を作り、
田坂さんは素焼前の花器の水拭きを。付着しているものがあると、
仕上がりに響くからのようです(ピンホールなど)。大きな花器で作業
には緊張感あり。効率よく並べなくてはいけない窯詰めは脳トレのよ
うです。この花器の数々には石田さんの途切れぬ集中力を感じます。

訪問時、新作のスリップウェアは
まだ制作がされておらず、工房で
見かけたのは数点のみでしたが、
その中には、実験的に作られたと
思われる新たなお色の物がありま
した。落ち着いたオレンジ色です。 
今展でご紹介下さる予定です。
南蛮焼締めは碗を主に、
白磁や紅毛手はアイテム豊富に
(特にお皿)出来上がっていました。

新旧2つの電気窯。それぞれの特徴を生かし、
使い分けをされています。
旧式の窯も使い勝手がいいそうです。

ご自宅の玄関に水仙の花。
紅毛手の徳利は一輪挿に。
春の香りただよう、美しい
空間になっていました。

「やればやるほど悪いところが見えてくる」
轆轤をひきながらそう言っていた石田さん。

[少しずつでも変わりたい]と言う強い
思いが、そう言う目を養うのでしょう。
課題を明確に出来る力は、一人で物を
作り出していく人に必要不可欠なのもの
だと、前進する石田さんから教わります。

日々の気づきがやり甲斐を生み、
息吹を感じさせてくれるような器作り
へと繋がっているようです。

「東西の狭間にあるような器を作りたい」
心に曇りのない石田さんの言葉です。

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2014年に石田さんの工房を訪ねた様子はこちらから