河上智美 ガラス展

3年ほど前に、茨城県南西部に位置する常総市に工房を移された河上さん。
4月中旬そちらを訪ねてまいりました。以前いらしたつくば市の工房には
何度かお邪魔しておりますが、移られてからは初めての訪問となります。
常磐道のインターを降りてから工房まで20分ぐらいだったでしょう。
その間、家電量販店に大型スーパー、飲食店も数々あり、暮らしに
不便は無い所のようです。左右が畑になり、緑が広がり始めたあたりで
細い道に折れ進むと、高い木々に囲まれた河上さんのお宅と工房、
そして今年1月に建てたばかりのギャラリースペースのある場所に辿り着き、
河上さんとパートナーの斉藤さんのお二人が出迎えて下さいました。

ギャラリー

工房

それぞれの室内

ご自宅の西側にギャラリー、東側に工房が建っています。ギャラリーの壁の
漆喰はお二人で塗り、飾り棚やテーブルは全て河上さんが作られたそうです。
さすが元木工部(高校の)。ガラスの光と木のぬくもりに包まれる心地良い空間。
(奥に作業スペースもあるようです) 工房は、熱が下にこもらないよう天井を
高く、窓も多くしたそうです。そのせいもあり、以前の工房よりかなり広く感じら
れました。正面中央にある、メタリックでタンク状の物が、ガラスが溶かされて
いる炉になります。ここに竿を入れ、溶けているガラスを巻きつけます。

河上さんの背丈ぐらいはある
メカ達です。危険も伴うこれらを
管理し使いこなしている河上さん。
大きな責任と決意をもって、
このガラス工房を構えた
のだろうと想像ができました。

[ガラスの色、色々]
左:初登場となる新色[オパール」の素がこちら。優しいオフホワイトです。
 棒状の物を砕き(中央下の状態)、それを炉の中で焼き戻しお団子状にし
 (右側の物)、透明のガラスでサンドして(簡単に言うと)吹くんだそうです。
中:色ガラスを細かく砕き、フリットと言う状態にした物は、ドット模様など
 をつける時に使うそうです。こちらはオリーブ色。
右:色ガラスのサンプル帳。チップ状の物が200色ちかくあります。この中
 から食器として使えそうな色を選ばれているそうです。かけらとして見てい
 るだけならばどれも綺麗ですが、器となると見方は確かにかわります。
 また実際に吹き形にしてみると、イメージとは 違う事もあるそうです。

2013年5月11日(土)−18日(土)
作家在店日:11日(土)

「スタンダードグラス」と名付け、
装飾性を削ぎ落とした新シリーズのグラス。
河上さんの得意とする、表情豊かな物に
感じられる大らかさは失われずに、
簡素で美しい日常使いの器になっています。
オパールと言う新色のアイテムなども増え、
また作業場を広げるなど環境も整え、
器作りに充実していると伺っています。
シェードや木と合わせたお品物等も
今展では見せていただけるようです。

[モール型]
イチゴ、レトロ、しぼり、12面、モザイク・・・ 河上さんの作る凹凸のある模様
シリーズ。これらはモールと言う型に、やわらかい状態のガラス種を入れて
から吹いています。見せていただいたモール型の半分以上は、身近にある
物を利用し、河上さんが作ったオリジナルでした。鉄パイプをカットしていたり、
ビックサイズのナッツ缶に、百均で大量買いしたと言うステンレス定規をくつけ
ていたり。よく出来ていいます。ナッツも相当食べたようです。おつまみとして…

[斉藤さん担当]
斉藤さんが立たれている場所は木工作業部屋。1畳半ぐらいのスペース
ですが、電のこ、溝を彫るトリマー、削りのサンダ―やルーターを使い、
バターケースやドームシリーズ、蓋物など、ガラスの形1つ1つにに合わせた
木の部分をここで斉藤さんが作られているそうです。そしてガラスの底を、
右画像にあるレコードプレーヤーの様な回転する盤のヤスリで、荒目から
細めまで、5段階にわけ磨き仕上げるのも斉藤さんの担当だそうです。

河上智美  かわかみともみ

1974年 東京生まれ
1993年 都立工芸高校
         室内工芸科 卒業
1997年 能登島ガラス工房
         宙吹きコース受講
1998年〜2001年
       株式会社松徳ガラス勤務
2003年 茨城県つくば市に
       [サッカベ硝子工房]を開く
2010年 茨城県常総市に
       [吹き硝子河上]の工房を構える

[お楽しみに]
出来たばかりのギャラリーには新しいお品物の数々も並んでいました。ドレッシ
ング用などにと作られていた新作ピッチャーにつける栓の素材や形を悩まれて
いた河上さん。店主の意見も聞かれましたが、さて、どんな形になって届くで
しょうか・・・ そして、今展ならではの新作をと、河上さんが意欲的に提案して
下さったのは、観葉植物などを水耕栽培(ハイドロカルチャーとも言いますね)する
器です。その植栽は店主が担当する事になりました。*先ほどそのお品が届き
ましたが、置き型あり、吊るしの物あり、形様々で可愛いです!

[ネコとお酒がとりもつご縁 河上さんと斉藤克彦さん]
公私ともにパートナーのお二人。河上さんが不得手としている部分を
全面的にフォローしていらっしゃる斉藤さん。そんな斉藤さんを信頼し、
ガラス制作に全勢力を注いでいる河上さん。ありのまま、形には拘らず、
二人だから成しえる事へ向かう姿は清々しく、カッコつけていないカッコ
よさがあります。笑ってばかり。明るいお二人です。

炉の脇にあったホワイトボードには、作る物の
リストがびっちり書き込まれていました。そして
3月〜6月までのカレンダーが横一列に張り出
されており、ガラスシーズンが開幕されている
工房内でした。ギャラリーは、一般の方が
いらっしゃるのも歓迎のようですよ。

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扉が開いている右の物は徐冷炉。吹き終え出来たばかり
の物の温度を徐々に下げる為の炉。急激な温度変化でガラス
は歪んだり割れたりします。