石田誠 器展

2018
3/24日(土)−4/8(日)
作家在店日:24(土)
(諸事情により今年は初日のみとなります)

*4/2(月)・3(火)はお休み致します。

石田誠 いしだまこと

1965年 愛媛県に生まれる
1988年 愛知県瀬戸市に転居
1989年 愛知県立窯業高等技術専門 
       専攻科卒
1996年 愛媛県松山市窪野町に築窯

3月開催が恒例となっている石田さんの個展。愛媛県松山市
の工房を訪ねるのも同様で、今年もお邪魔してまいりました。

バスを降り、工房に続く道の途中で、以前乗せていただいた事
のある軽トラに再会。粘土や材木(薪窯の)運搬用のようです。
若葉にざわめく頃を想像し、周囲の山を眺めるのも毎年のこと。
朝方まで降っていた雨のせいか、沢の音が谷合に響きます。

石田さんは飯碗(紅毛手や白磁となる)の轆轤をひいていました。
3.5寸や4寸のものを多く作られいますが、より程良い大きさをと、
更にサイズを刻み、3.8寸(約11.5cm)の飯碗を今回制作。コップ
状に荒伸ばしをした後、胴部を広げていきます。見込みにコテを
当てしばらくすると、「おかしいなぁ」とつぶやき轆轤が止まります。
立ち上がり広げているのは、碗の断面図に、サイズ等が記録さ
れている制作ノートのようです。確認を終えた石田さんは・・・

 ・・・
工房の戸を開け、その場でコテに
グラインダーをかけ始めました。
碗の形にコテが添わなかった
らしく、カーブを削っています。
それは1mmほどだったようですが、
その僅かな違いが、碗の手取りに
左右してくるようです。

山びきをする粘土のかたまりから、コテに違和感を感じた最初の
1つを除き、15個ほどがきれいにさげ板に並びました。3.8寸碗
の焼き上がり、そのサイズ感は展覧会で是非ご確認下さい。

青や緑の色味が感じられるグレー。藤やラベンダーの花が
浮かぶ淡い紫。盛り映えも想像できるスモーキーな新色。
美しく際立つ1つ1つの形は、優しいグラデーションも描きます。

工房にはもうお一方。去年もお会いしている陶芸家の恒岡志保さん
です。ご自身の仕事の合間をぬってのお手伝い。スケージュール
を合わせるご苦労もあるよう。この日は新色となるパープルの釉薬
調合を任され、プレッシャーのかかる作業をされていました。

1:右がサンプルとなる最初にできたパープル。左はその次の物で、
 同じ調合のはずがライトブルー寄りの色に。その原因をめぐって
 は見解が分かれるお二人でしたが、狙い通りにならなかった色も
 悪くないと言う意見は一致(店主も)。透明感のある爽やかな色です。
2:原料を粉砕、撹拌する為のポットミルの容器と磁器製のボウル。
3:8種類の原料と水を用意。その分量を記したメモの数字と、計量
 機の針の位置を何度も指さし確認されている恒岡さん。
4:原料とボウルを交互に入れていきます。
5:天秤ばかりで量っているのは色の決め手となる顔料(安くは無い
 そう)です。恒岡さんの面持ちから緊張が伝わります。
6:最後に顔料を投入。この後、ポットをローラーの上で一晩回転さ
 せ完了となるそうです。こちらの焼き上がりも会場でご覧下さい。

1

出来上がっていた品々です。紅毛手に白磁、半磁となるストーン
ウェアのブラウン系。碗やポットボウルなどの南蛮焼締もあります。
新色では見当たらなかった、花器やピッチャー、小付など、時間
的難しいかとは思いましたが、リクエストはしてまいりました。

石田さんがこの一年で器のつくりを変えている箇所があります。
形ではなく、施釉の仕方にあり、それはまた一見気がつきにく
い高台部分にあります。テーブルなどの接地面で、指先など
も触れる畳付きに釉を掛けるようになっています。そうする事
により、調度品への当たりがやわらかく、手触りも良くなります。
わかりやすいのはカップ類でしょう。画像Aの左側4点は生地
が覗くこれまでのレギュラー。右側4点は総掛けのもので、
器形のシルエットが細部(高台)までくっきり浮き上がります。
画像Bは総掛けされたハットボウルやポットボウルの裏面です。

A

B

3.8寸の碗や釉薬の総掛けは、石田さんがよくおっしゃっている
[マイナーチェンジ]の1つと言えるのでしょう。些細な気づきを
見落とさぬよう、手を動かし、これまでも繰り返されてきたこと。
より質の良い器をと、手間を惜しまない仕事に励まれていました。

好きな言葉は「則天私去」。夏目漱石の残した造語だそうです。
石田さんの強い信念を感じます。

遠慮は無用となっているようなお二人の会話に今年も笑わせ
ていただきました。信頼と気の合う部分もあっての事でしょう。

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